2022.10.20
鋳巣の読み方
概要
この2字熟語をなんと読みますか?
「鋳巣」
実は鋳造業界では2つの読み方が存在するこの熟語。
業界では「ちゅうす」ないし「いす」と読まれます。
そんな鋳巣の読み方について考えてみます。
音読み、訓読み
小学校で習った音訓を思い出さなければなりません。
音と訓、どっちがどっちなのかパッと判断できませんが、音読みをChinese Reading、訓読みをJapanese Readingと英訳するそうです。
英語の方がわかりやすいですね。
小学校でも中国読み、日本語読みの方が音読み、訓読みよりも小学生にわかりやすいような気がしてきました。
そんな音訓ですが、阿辻京都大学名誉教授1)によると、
「もともと漢字熟語は音読みで読むのが正しいあり方」
とのことです。
「科学」、「論文」、「技術」など、たしかに学術用語は音+音で読むものがほとんどです。
この音+音ルールにあてはめて「鋳巣」を読むと「ちゅうそう」になります。
このように読んでいる方にお会いしたことがありません。
「ちゅうす」は音+訓、「いす」は訓+訓です。
「ちゅうす」のように先に音を読んで、後に訓を読むのを重箱読みといい、これはどうやらレアケースのようです。
「いす」は訓+訓読みとなり、この関係は比較的よくあります。
私も小学校時代に音+音か訓+訓が多い、と習ったような気がします。
それが正しいとすると「いす」という読み方は一般的です。
ただ、重箱読みが正しくないかと言われればそうではなく、先ほどの阿辻京都大学名誉教授によると、
「重箱読みは、漢字の熟語を耳で聞いたときに少しでもわかりやすくするための変則的な読み方」
とありますので、「ちゅうす」と読む気持ちはわかります。
「いす」と聞くと身近な「椅子」を連想してしまいます。
したがって、鋳造でできた巣をわかりやすく「ちゅうす」と読むのも納得できます。
ちなみに「鋳」がつくのは用語をみると以下のような関係になります。
たしかに日本語のルールに沿っています。
音+音タイプ
- 鋳造 ちゅうぞう
- 鋳鉄 ちゅうてつ
- 鋳塊 ちゅうかい
- 鋳鋼 ちゅうこう
訓+訓タイプ
- 鋳物 いもの
- 鋳型 いがた
では鋳造業界での読み方の実際はどうでしょうか。
アルミニウム鋳造を扱う技術者と話していると、読み方の肌感として、比率はちゅうす:いす=9:1ぐらいです。
「ちゅうす」が市民権を得ているような感じがします。
結局、鋳巣の読み方は何が適切か迷いますが、正直「ちゅうす」でも「いす」でもどちらでもいいと思います。
私は相手が「ちゅうす」と言えば「ちゅうす」と言いますし、「いす」と言えば「いす」と言います。
そのときそのときで日本語、ひいては学術用語は変化していきますのでうまく意思疎通がとれればそれでいいのです。
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