2022.11.08

AD12.1とADC12の違い

概要

AD12.1とADC12の違いは、インゴットとダイカストの材料規格の違いになります。扱っている中身はほぼ同じものですが、呼び方が異なります。そんなAD12.1について少々説明します。

1. AD12.1とは

AD12.1とは、ADC12のインゴット規格の名称です。
JIS H 2118ダイカスト用アルミニウム合金地金において規定され、主にインゴットメーカーでの材料成分規格と言えます。ダイカストメーカーの立場から見ると、インゴット受入の際はAD12.1、インゴットを溶解して鋳造するとADC12として扱います。材料調達や溶解工程担当はご存知の方が多いですが、それ以外の方はあまりお目にかからない内容かもしれません。
ちなみにAD12.1とADC12の区分は重要です。それは材料成分が異なるからです。次項では材料成分について説明します。

ADC12(AD12.1)のミクロ組織

2. AD12.1とADC12の材料成分の違い

表はAD12.1とADC12の材料成分の値を示しています。AD12.1とADC12の違いはFeの含有量のみです。その他の成分は変わりません。
AD12.1は0.6~1.0%Fe、ADC12は1.3%Fe以下となっています。このわずかな差が極めて重要です。Feは入れすぎるとダイカストの靭性を悪化させ、入れないと金型とダイカストが焼付き易くなります。ダイカストメーカーではFeを1.3%以下と規定されていることが多いのですが、実はインゴットメーカーがうまいことコントロールしてくれているとも言えるのです。ちなみにインゴットメーカーは、このAD12.1とは別にさらに細かい自社規格を持っていることが多いようです。

合金名 Cu Si Mg Zn Fe Mn Cr Ni Sn Pb Ti Al
AD12.1 1.5~3.5 9.6~12.0 ≦0.3 ≦1.0 0.6~1.0 ≦0.5 - ≦0.5 ≦0.2 ≦0.2 ≦0.30 残部
ADC12 1.5~3.5 9.6~12.0 ≦0.3 ≦1.0 ≦1.3 ≦0.5 - ≦0.5 ≦0.2 ≦0.2 ≦0.30 残部

3. ADC12(AD12.1)のミクロ組織

写真はADC12ダイカストのミクロ組織です。この写真をADC12のミクロ組織とは言えますが、AD12.1のミクロ組織とは厳密にはいえません。AD12.1は溶解するとADC12となるからです。ただ実際はほぼ同じものです(材料成分の減耗があります)。

ADC12(AD12.1)のミクロ組織

Articles

鋳造用アルミニウム合金

2023.03.14

鋳造用アルミニウム合金の基礎と種類

鋳造用アルミニウム合金について、基礎から実用合金までを詳しく説明したページです。鋳造用アルミニウム合金はアルミニウムとシリコンを基本とし、共晶凝固という固まり方をするのが特徴です。Al-Si系状態図、合金の種類を解説しています。ダイカスト、重力鋳造など、凝固がわかると鋳造がわかるようになります。

ADC12の材質と特徴

2023.10.25

ADC12の材質と特徴

ADC12とは、アルミニムダイカストに使用される合金のひとつです。このアルミニウム材料は、材料費がリーズナブルであること、鋳造性が良いこと、切削性が良いことから、日本のダイカスト業界で最も多く使用されています。日系企業の海外進出に伴い、国際的にも広く使用されています。本記事では、ADC12の材質と特徴について詳しく紹介します。

ダイカストの鋳造不良

2024.03.17

ダイカストの代表的な鋳造不良10種とその対策

ダイカストの特徴は、速度がはやく、圧力が高く、急冷されることにあります。これによって生産性のよいものづくりができるわけですが、品質にとってはプラスとマイナスの因子が混在することになります。このため、ダイカストには鋳造不良が発生しやすいと言われています。そんなダイカストにおける鋳造不良について考えてみます。

Articles一覧

マテリアルデザインイメージ

マテリアルデザインにできること
鋳造不良の原因分析
仕入先支援
ベンチマーク調査
⼯程設計⽀援
鋳造教育
鋳造設備、副資材の販売

参考文献

Published Material

参考文献