2022.10.19

ADC12の応力ひずみ線図

概要

ADC12ダイカストの応力ひずみ線図について、実際の応力ひずみ線図を用いて解説します。
機械設計者だけでなく、鋳造解析を生業とする解析エンジニアの方にも重要となってきますのでご一読いただければ幸いです。

1. 応力ひずみ線図とは

応力ひずみ線図とは、引張試験ないし圧縮試験によって得られる応力とひずみの関係線図です。英語ではStress Strain Curve(S-S Curve)といわれます。縦軸に応力、横軸にひずみとなっていて、材料特性を知るのに便利です。

ダイカスト及び鋳物の材料特性は、以下表のような数値データを目にすることが多いかと思います。数値だけでも材料特性は理解できるのですが、応力ひずみ線図の方が視覚的にわかりやすいので、応力ひずみ線図をみていただくことがおすすめです。

合金名 耐力
MPa
引張強さ
MPa
伸び
%
硬さ
HB
硬さ
HRB
ADC12 157
σ=14
228
σ=41
1.4
σ=0.8
74.1
σ=1.5
40.0
σ=1.8

しかしながら、ダイカストの応力ひずみ線図はウェブ上では意外に見つかりません。アルミダイカストはJISでも機械的性質に言及していないこともあって、応力ひずみ線図の開示が少ないのかもしれません。

2. ADC12ダイカストの応力ひずみ線図

自動車用アルミニウムダイカストから試験片を切り出し、引張試験をやってみました。材料はADC12合金、熱処理は施されていません。

2つの応力ひずみ線図は同じ製品から材料を切り出していますが、その様相はだいぶ異なります。「伸び」が違うことがわかりますか?最終的なひずみを「伸び」とすると本当は少し語弊がありますが、おおよそ伸びでOKです。
ひとつは伸び2.7%、もうひとつは伸び1.4%となっています。0.2%耐力はいずれも約150MPaです。引張強さは伸びがある方が高くなりますので、おおよそ264MPa、222MPaとなっています。

ADC12の応力-ひずみ線図 その1

ADC12の応力-ひずみ線図 その1

3. 構造材料として見たときのADC12

ADC12の応力ひずみ線図を材料屋視点でみますと、構造材料とはちょっと良くないスペックです。伸びが低いということは、欠陥がある、材料自体に靭性がない、のどちらかですが、ADC12ダイカストはその両方です。
下図はダイカストに生成した鋳巣になります。こうした欠陥がダイカストには多く含まれますので伸びが出にくくなります。鋳造業者にはこうした欠陥が少なくすることが求められます。

ダイカストに生成した鋳巣

下図はADC12ダイカストのミクロ組織になります。硬くて脆いSi、金属間化合物がダイカスト鋳物の中に存在しますので、靭性を低下させます。ADC12の合金成分によって決まるので、こればかりはどうしようもないところがあります。真の構造材料として使うのであれば、避けるべきでしょう。

ADC12ダイカストのミクロ組織

ADC12に関して、詳しく解説しています。ぜひご覧ください!

4. ADC12の高温引張特性

おまけにADC12の高温時における応力ひずみ線図を紹介します(下図)。200℃の環境で引張試験をやっています。こちらは試験片サイズの都合から、舟金型に鋳込んだサンプルを用いています。したがって、ダイカストで作られたサンプルとそのまま比較するのはNGですのでご注意ください。
さて、この応力ひずみ線図ですが、伸びが大きく、引張強さが低いことがおわかりでしょうか。アルミにとって200℃はかなり高い温度になります。そのため材料が軟化し、やわらかい応力ひずみ線図になるのです。

ADC12ダイカストの高温引張試験結果 200℃

5. おわりに

ADC12の応力ひずみ線図について、ご理解いただけたでしょうか。なんとなくで結構ですので「わかった!」となったらうれしいです。
高温時の応力ひずみ線図を最も必要とするのは、実は鋳造解析エンジニアです。MAGMAしかりTopCASTしかり、こうした解析ソフトでは精度向上のために実際のデータの反映が望ましいのです。もしご興味あれば、お問合せください。

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