2023.07.18

ダイカスト(HPDC)の特徴とメリット

概要

多くの鋳造部品がダイカスト工法で作られています。そんなアルミニウム合金をつかったダイカストについて、メリット、デメリット、そして特徴を説明します。

1. ダイカストとは

ダイカストとは、精密な金型に溶融金属を高温で圧入し、高精度で鋳肌の優れた鋳物を短時間に大量生産する鋳造工法です。高い生産性をもっていますので、自動車、家電などさまざまな分野で利用されています。ダイカストでつくられる製品もダイカストと呼ばれます。
海外で"ダイカスト"と言うと伝わらない場合があります。日本においてダイカストといえば高圧金型鋳造(HPDC:High Pressure Die Casting)を指しますが、海外では単に金型鋳造を指します。HPDC(ダイカスト)、LPDC(低圧鋳造)と使い分けが必要な場合がありますのでご注意ください。

2. ダイカスト工法の種類

ダイカストは図のような横型コールドチャンバタイプの鋳造機(ダイカストマシン)が使われます。ダイカストマシンは、金型部と金型を開閉するための型締め部、製品を金型から押し出すための押し出し部、そして金型内に溶融金属を圧入する射出部から構成されています。これを一般的にダイカストと言いますが、その他のダイカスト工法と区別されるために普通ダイカストと言われることがあります。

  • 普通ダイカスト
  • 高真空ダイカスト:金型内を減圧してから鋳込むダイカスト工法
  • スクイズダイカスト:縦型ダイカストマシンを用いて低速かつ高圧で鋳込むダイカスト工法
  • 半溶融・半凝固ダイカスト:アルミを粒状化させた状態で鋳造するダイカスト工法
  • PFダイカスト:金型内に酸素を置換して鋳造するダイカスト工法

この写真はドイツのダイカストマシンメーカーFRECHのダイカストマシンです。GIFA2023のFRECHブースにて撮影しました(許可を得ています)。

ダイカストマシン

3. ダイカストのメリットとデメリット

ダイカストにはメリットとデメリットが混在する難しい工法です。両者を正しく評価し、採用することが重要です。そんなダイカストのメリットとデメリットについて説明します。

メリット

  • 優れた寸法精度
  • 高い生産性
  • 薄肉鋳物が可能
  • 後加工が少ない(ニアネットシェイプ)
  • きれいな鋳肌

ダイカストはその他工法よりも圧倒的な量産性を有していますので、自動車、家電など様々な業界で使われています。

デメリット

  • 強度がばらつく
  • 鋳造不良が発生しやすい
  • 設備&型投資が高い

デメリットの代表は予期せぬ鋳造不良がダイカストには多いことです。代表的なダイカストの鋳造不良についてはこちらを参照ください。

4. ダイカスト金型

ダイカスト金型の概略図を図に示します2)。ダイカスト金型は、製品を形作るキャビティ部(入子)とそれを保持する母型(おもがた)から構成されます。入子は熱間工具鋼SKD61、母型は鋳鉄ないし鋳鋼で製造されることが多いです。金型は型締め側と射出側に分割され、型締め側を可動型、射出側を固定型と呼んでいます。溶湯の熱を金型系外に排出するため、金型には冷却配管が配置されています。

ダイカスト金型

5. ダイカスト用アルミニウム合金

日本のダイカスト業界において、最も使用量が多いアルミニウム合金はJIS ADC12です。その昔はADC10も使用されていましたが、最近ではADC12へ統合されてほとんど見なくなりました。用途に合わせてさまざまな合金がJISで規格されており、今後のEV化を推進されるにあたり要求特性にあった合金が選択されていくものと推定されます。

6. ダイカストの最近の流行り

2018年から大型ダイカストマシンのリリースが相次いでいます3)。2018年にイドラのOL 5500 CS(5500tDCM)を皮切りに、2019年にイドラのOL 6200 CS(6200tDCM)、2022年にはLKのDreampress 12,000T(12000tDCM)と拡大をつづけています。
国内では2022年にUBEマシナリーから6,500tDCMがリリースされています4)
世界的な流行になっていますので、自動車メーカーを筆頭に今後はダイカストの大型化がされていくものと思われます。

7. その他

ダイキャスト、ダイカストと呼び名がありますが、業界ではダイカストと呼ばれることが多いです。
「Castをカストと読むのはちょっと・・・」と思わなくもありませんが、現状はダイカストが読み方として主流です。ただ、ギガキャストはギガカストって読まないんですよね。不思議です、業界用語。

マテリアルデザインイメージ

マテリアルデザインにできること
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参考文献

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