2023.10.26

ハードスポットの原因と対策

概要

機械加工屋さんからものすごく怒られる不良にハードスポットがあります。チップが欠けた、精度がでない、選別しないといけない!などなどダイカストメーカーにとってかなり厳しい不良と言えます。この記事では、そんな頭痛の種であるハードスポットの種類、原因と対策、そして測定と管理について説明します。

1. ハードスポットとは

ハードスポットとは鋳物に含有される硬質な介在物のことをいいます。これがあると切削、タップ加工などの機械加工時に工具先端が欠けるため、大量の寸法不良品が製造されてしまいます。チップ先端が僅かに欠ける不良をチッピングと呼ばれることから、チッピング不良とも言われます(この記事ではハードスポットで統一します)。下の写真はADC12ダイカストで発生したハードスポット不良の一例です。黒く写っている部分が介在物(ハードスポット)です。ハードスポットに切削工具があたると、ツールマークが粗くなることがわかるかと思います(切削方向は紙面の下から上に向かっています)。ハードスポット不良が生じると、面粗さがでなくなる、寸法精度がでなくなるなどの機械加工工程に不具合が多発します。

ハードスポット

本記事では、アルミニウム合金ダイカストにおけるハードスポットを取り扱います。鋳鉄にもアルミ鋳物と同様のハードスポット不良が生じますが、チル、ステダイトといった異なる呼び方になります。そのため鋳鉄のハードスポットに関しては割愛します。

2. ハードスポットの種類

アルミニウム合金のハードスポットには、以下リストにあるように多くの種類が報告されてきました1)。しかしながら最近では、酸化物系のハードスポットを多く見かけます。特にスピネルとよばれるMgAl2O4がハードスポットとなる割合が高いです。このスピネルの硬さは1,000HV程度あります。ADC12ダイカストの硬さは80〜110HVですので、スピネルとの硬さの差は大きいものになります。そのため、ハードスポットが含まれているダイカスト製品を切削加工し、切削中にハードスポットと工具先端が接触すると、工具先端に衝撃荷重がかかることで刃先が欠けてしまいます。

  • 耐火物混入型
  • 溶湯酸化型
  • 金属間化合物型
  • 複合型

3. ハードスポットの分析方法

下の図は、SEM-EDXを用いてハードスポットを成分分析した結果になります。このような成分分析を行うことで、ハードスポットの原因を特定できます。経験的にほとんどが酸化物が原因のことが多いのですが、耐火物由来、はたまた金型が製品に混入していたりすることがあります。自社で分析した結果をまとめてデータベース化すると、何を対策すべきか理解できます。ほとんど酸化物という結果になるでしょうが、現状把握は重要です。
分析の手順は、一般的には目視で異物を確認し、異物を特定するためにSEM-EDXが用いられます。出てきた元素分析結果から、ハードスポットとなった異物を推定することになります。

ハードスポットのSEM画像

ハードスポットのSEM-EDX面分析Al

ハードスポットのSEM-EDX面分析Mg

ハードスポットのSEM-EDX面分析O

ハードスポットのSEM画像

ハードスポットのSEM-EDX面分析Al

ハードスポットのSEM-EDX面分析Mg

ハードスポットのSEM-EDX面分析O

ハードスポットの分析

4. デメリット

  • 工具(チップ)が早期に折損する
  • 大量の寸法不良が発生する
  • ゆえに機械加工工程の生産性が低下する

ハードスポットにはメリットは一切ありません。
ハードスポットがあった場合、チップ単体が飛ぶということはありません。チップの先端がわずかに欠けます。そのため、切削加工中にチップ欠けを設備で自動検出するのはかなり難しいです。これに加え、現在の機械加工工程は自動化が進んでいますので、気づかずに連続して切削部品が後工程に流れてしまいます。チップ欠けが生じても設備側で止めることができず、ハードスポット不良が判明するのは寸法検査であったり、面粗さの検査になります。そのため、大量の寸法不良品が発生します。ラインオペレーターはどこから寸法異常がでたか調査をしたり、選別したり、かなり大変な思いをされています。機械加工業者はこうした理由からハードスポット不良を嫌いますので、鋳造業者は特に気を遣う鋳造不良といえます。
生産性低下以外にも、その他の鋳造不良も多くなる傾向になりますので注意が必要です。鋳巣不良、欠け不良などがそれに該当します。また、ハードスポットはアルミニウム合金に含有するかい財物ですので、機械的性質が著しく低下します。
ハードスポットはデメリットこそあれ、メリットがないことをご理解いただけたと思います。

5. ハードスポットの原因

ハードスポットの原因はアルミニウム合金の酸化といっても過言ではありません。チップを飛ばすハードスポットをマテリアルデザインにて調べたところ、9割以上は酸化物起因でした。
酸化は溶解炉、保持炉、搬送トリベなど、どこでも生じます。設備全体を酸素から遮断しない限り、アルミニウム合金の酸化を防ぐのは難しいでしょう。したがって、現在の工程では必ず酸化が生じる、つまりハードスポットが生じるということになります。
参考に酸化のしやすさを示すエリンガム図を紹介します2)。この図では、下にいくほど酸化しやすい、とお考えください。アルミニム自体も酸化しやすいことはもちろん、それよりも酸化しやすいMg、Caなどをアルミニウム合金は含有していますので酸化は必ず生じます。これに時間、温度のファクターが追加されますので現象は複雑ですが、原因は酸化と覚えていただければOKです。

エリンガム図

6. ハードスポットの対策

ハードスポットの原因は酸化にあるということをお伝えしました。単純に考えると「酸化しなければよい」になりますがそこまで完璧な設備を見たことがありません。ではどうするかというと、「溶湯清浄度の向上」をおすすめします。
マテリアルデザインではフラックスによる溶湯清浄度の向上を推奨しています。下図のような回転翼脱ガスとフラックスの併用していただくと、効率的に酸化物を除去していただくことが可能です。

回転翼脱ガス+フラックス

また、わかっているようでよくわからないフラックス処理について以下リンク先にまとめました。フラックスとは何か、ご理解いただけると思いますのでぜひご覧ください。

近年、溶湯フィルターが流行しています。しかしながら、溶湯フィルターには以下のデメリットがありますので導入には注意が必要です。

  • 汲み出し部の溶湯温度が下がる(フィルタ内外で温度差ができる)
  • そもそもフィルターが高価
  • フラックスが使えなくなり、炉のオバケ生成がはやくなる

ハードスポット対策において、貴社の実情に合わせた対策方法を立案いたします。

7. 溶湯清浄度の測定と管理

ハードスポットを管理するには、溶湯清浄度と呼ばれるものを管理する必要があります。溶湯清浄度とは、読んで字の如く、溶湯のきれいさを表す指標です。具体的には以下の方法で清浄度の測定と管理をしていることが多いです。

  • Kモールド
  • PoDFA
  • 採取重量法(簡易PoDFA、網八)
  • 熱分析

7.1 Kモールド

Kモールドは元日軽金の北岡氏が開発した方法です。2020年にJISに登録されました3)。Kモールド法は鋳型に鋳込まれた試験片をハンマーなどで破断して、その破面に存在する介在物を観察により計測する方法です。簡易的でありながら精度の高い方法ですが、観察者に精度が依存することが課題です。また、採取、破断、観察と一連の作業時間が思ったよりもかかります。

7.2 PoDFA

PoDFAはPorous Disc Filtration Apparatusの略で、フィルタ(ポーラスディスク)に溶湯を濾して通過した重量を評価する方法です。最も溶湯清浄度の精度が高いのですが、測定時間がかかることが課題です。測定者の技量は大きく影響しません。

7.3 採取重量法(簡易PoDFA、網八)

採取重量法は、あらかじめ秤量した金網を溶湯中で180°回転させ、取り出した後に再び秤量し、増加した重量により溶湯注の介在物量を測定する方法です4)。MRDC社で網八という商品名で販売されています。マテリアルデザインでは、金網で簡易的に濾過することから簡易PoDFAと呼んでいます。この方法は、測定精度が高く、作業者によるばらつきが小さく、測定時間が短いことが特徴です。写真が実際の採取重量法の検査写真です。

簡易PoDFA

7.4 熱分析

熱分析による溶湯清浄度測定法は、鋳造工学会でも議題にあがった方法です(日本鋳造工学会 非鉄鋳物研究部会 第106回)。この方法に関する真偽については、当社はコメントを差し控えさせていただきます。

8. まとめ

ハードスポット不良は、アルミニウム合金中に生成する酸化物が主であることを説明しました。対策には、溶解炉、保持炉、トリベなどの清掃、フラックスを用いた溶湯清浄度が有効です。溶湯清浄度の測定及び管理は、採取重量法をおすすめします。分析は目視でも問題ありませんが、費用が許すのであればSEM-EDXが最適です。
ハードスポットの原因分析、対策でお困りでしたらお問い合わせください。貴社に合わせた溶湯清浄度の向上、清浄度管理などをご提案いたします。

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