2022.11.20

ダイカストの塗装不良

概要

ダイカスト製品を塗装すると、ピンホール不良、ハジキ不良、密着不良などの塗装不良が生じることがあります。これらの対策は鋳造工程、加工工程、塗装工程と工程をまたぐため、少々複雑です。本記事ではダイカストへの塗装、塗装不良の種類、分析方法について説明いたします。

ダイカストの塗装不良のイメージ図

1. ダイカストへの塗装

ダイカストには意匠(外観品質)、耐食性向上のため、塗装されることがあります。クルマのボンネット内部は一般にユーザーから見えないため塗装されることが少ないですが、バイクのように構造部材が剥き出しの場合は塗装されることが多くなります。製品の外観を美しくするために、色、模様に工夫をめぐらすことを意匠と言うのですが、この意匠というのがエンジニアを悩ませるものになります。耐食性の向上は、塗膜により外気と遮断することが目的として塗装が用いられます。

塗装の種類には、吹付塗装(スプレー塗装)、粉体塗装、カチオン電着塗装などがあります。これらは要求仕様、コストによって決定されます。製品設計から塗膜が要求されることは、膜厚、色、艶、ムラなどがあります。膜厚は計測することが比較的容易ですが、その他は人の感覚が入ってくる場合も多く、苦労することも少なくありません。数値化して閾値を明確に決めても「最終確認は感覚!」のようなこともあり、なかなか難しいのが意匠品質の特徴です。また、耐食性の確保も重要な項目となり、これらを総合的に高所して塗装種類が決定されます。

2. 塗装不良の種類

塗装不良が生じるとそのロスコストは大きなものになります。塗装は鋳造後に実施されるか、機械加工が入った後に実施されることになりますが、塗装の前工程のコストが積み重なって塗装のロスコストとなるため、経営に与える損失が大きくなります。そのため塗装不良は極力0にしたいのが心情です。ところが塗装時の不良がたびたび生じてしまいます。以下はダイカストで生じる代表的な塗装不良の種類になります。

  • ピンホール不良:塗膜表面に点上の孔が生じる不良
  • 密着不良:塗膜が母材から剥がれてしまう不良
  • ハジキ(クレーター)不良:塗膜表面がクレーター状になり、母材が露出する不良
  • ふくれ不良:塗膜が凸となる不良
  • へこみ不良:塗膜が凹となる不良

写真はハジキ(クレーター)不良の一例です。多くのクレーターができ、ダイカストの母材が露出していることがわかります。また、へこみ不良もところどころ見受けられます。こうしたものは不良として後工程に流してはいけないことは自明です。

ハジキ(クレーター)不良の一例

3. 塗装不良の分析

塗装不良は塗装工程だけに原因があるのではなく、鋳造工程、加工工程にも原因があることがあります。したがって、鋳造から塗装までを工程スルーで見ることが重要となります。
 マテリアルデザインでは、塗膜の断面ミクロ組織観察から、塗装不良の原因推定のご依頼を受けることがあります。以下の写真は実際の塗膜断面を観察した結果です。写真の下部が鋳物、その直上が塗膜になります。塗膜に凹み、内部に空間があいていることがわかるかと思います。こうしたミクロ的な組織観察、SEM-EDXを用いた元素分析、鋳造条件、後処理条件、塗装条件を総合して塗装不良原因を分析することになります。原因がわかれば対策が明確になりますので、このプロセスはかなり重要になります。

塗膜断面のミクロ組織観察結果

4. その他(アルマイト)

自動車の電動化の要求と相まって、アルマイト処理の要求が多くなってきているように思います。アルマイトは塗装とは異なり、母材に酸化皮膜を生成させることで被膜形成する技術です。アルマイトの膜厚が不均一になる、アルマイトの膜がうまく形成できないなど、ダイカストではいろいろな不具合を見ききします。これも塗装被膜の対策と同様に分析が重要になります。ご興味ありましたらお問い合わせいただければ幸いです。

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