2023.10.13

アルミニウム合金ダイカストの化学成分一覧【JIS】

概要

ダイカストで用いられるアルミニウム合金の成分は、JIS H5302:2006(アルミニウム合金ダイカスト)に規定されています1)。日本ではADC12がメジャーな合金ですが、他にも特色のある合金がJISでは規定されています。このページでは、JISに規定されているアルミニウム合金ダイカストの成分について説明します。

JIS H 5302 アルミニウム合金ダイカストの成分

1. アルミニウム合金ダイカストの成分表(旧JIS)

以下の表にアルミニウム合金ダイカストの成分表を示します。
アンダーラインが引かれている合金名は詳細をリンク先にて紹介しています。

化学成分, 質量%
合金名 Cu Si Mg Zn Fe Mn Cr Ni Sn Pb Ti Al
ADC1 ≦1.0 11.0
~13.0
≦0.3 ≦0.5 ≦1.3 ≦0.3 - ≦0.5 ≦0.1 ≦0.20 ≦0.30 残部
ADC3 ≦0.6 9.0
~11.0
0.4
~0.6
≦0.5 ≦1.3 ≦0.3 - ≦0.5 ≦0.1 ≦0.15 ≦0.30 残部
ADC5 ≦0.2 ≦0.3 4.0
~8.5
≦0.1 ≦1.8 ≦0.3 - ≦0.1 ≦0.1 ≦0.10 ≦0.20 残部
ADC6 ≦0.1 ≦1.0 2.5
~4.0
≦0.4 ≦0.8 0.4
~0.6
- ≦0.1 ≦0.1 ≦0.10 ≦0.20 残部
ADC10 2.0
~4.0
7.5
~9.5
≦0.3 ≦1.0 ≦1.3 ≦0.5 - ≦0.5 ≦0.2 ≦0.2 ≦0.30 残部
ADC10Z 2.0
~4.0
7.5
~9.5
≦0.3 ≦3.0 ≦1.3 ≦0.5 - ≦0.5 ≦0.2 ≦0.2 ≦0.30 残部
ADC12 1.5
~3.5
9.6
~12.0
≦0.3 ≦1.0 ≦1.3 ≦0.5 - ≦0.5 ≦0.2 ≦0.2 ≦0.30 残部
ADC12Z 1.5
~3.5
9.6
~12.0
≦0.3 ≦3.0 ≦1.3 ≦0.5 - ≦0.5 ≦0.2 ≦0.2 ≦0.30 残部
ADC14 4.0
~5.0
16.0
~18.0
0.45
~0.65
≦1.5 ≦1.3 ≦0.5 - ≦0.3 ≦0.3 ≦0.2 ≦0.30 残部

日本ではADC12が最も使用されています2)。ひとまず覚えておくべき合金はADC12といえるでしょう。ひとつ注意していただきたいのは、
「ADC12は機械的性質と鋳造性に優れる」
という記述が多いのですが、これは誤解を招く表現です。耐力は高いのですが、伸びが低い合金であるため機械的性質は総合的にみるとよくありません。LCAに優れる、リサイクル性に優れる、サステナブルな合金、とするのが妥当です。ADC12について詳細に記述していますので、ご興味ある方はこちらをどうぞ。

たまに「ADC12Zって何?」とご質問をいただくことがあります。そりゃ思いますよね、勝手にZなんてついてたら。
ADC12ZはADC12のZn(亜鉛)の成分規格を緩和したものです。ZnのZをとってADC12Zとしたのかな、と考えているのですがその経緯は当社ではよくわかっていません。
北米で材料調達する場合は、図面にADC12Zと指示されることがあります。

2. アルミニウム合金ダイカストの成分表(ISO対応)

その昔はADC○○というのがダイカストの合金規格でしたが、現在は従来のJIS規格にISO規格が追加されて利便性の向上が図られています。

化学成分, 質量%
合金名 Cu Si Mg Zn Fe Mn Cr Ni Sn Pb Ti Al
Al Si9
(1)
≦0.10 8.0
~11.0
≦0.10 ≦0.15 ≦0.65 ≦0.50 - ≦0.05 ≦0.05 ≦0.05 ≦0.15 残部
Al Si12(Fe)
(2)
≦0.10 10.5
~13.5
≦0.10 ≦0.15 ≦1.0 ≦0.55 - - - - ≦0.15 残部
Al Si10Mg(Fe)
(1)
≦0.10 9.0
~11.0
0.20
~0.50
≦0.15 ≦1.0 ≦0.55 - ≦0.15 ≦0.05 ≦0.15 ≦0.20 残部
Al Si8Cu3
(2)
2.0
~3.5
7.5
~9.5
0.05
~0.55
≦1.2 ≦0.8 0.15
~0.65
- ≦0.35 ≦0.15 ≦0.25 ≦0.25 残部
Al Si9Cu3(Fe)
(2)
2.0
~4.0
8.0
~11.0
0.05
~0.55
≦1.2 ≦1.3 ≦0.55 ≦0.15 ≦0.55 ≦0.25 ≦0.35 ≦0.25 残部
Al Si9Cu3(Fe)(Zn)
(2)
2.0
~4.0
8.0
~11.0
0.05
~0.55
≦3.0 ≦1.3 ≦0.55 ≦0.15 ≦0.55 ≦0.25 ≦0.35 ≦0.25 残部
Al Si11Cu2(Fe)
(2)
1.5
~2.5
10.0
~12.0
≦0.30 ≦1.7 ≦1.1 ≦0.55 ≦0.15 ≦0.45 ≦0.25 ≦0.25 ≦0.25 残部
Al Si11Cu3(Fe) 1.5
~3.5
9.6
~12.0
≦0.35 ≦1.7 ≦1.3 ≦0.60 - ≦0.45 ≦0.25 ≦0.25 ≦0.25 残部
Al Si12Cu1(Fe)
(2)
0.7
~1.2
10.5
~13.5
≦0.35 ≦0.55 ≦1.3 ≦0.55 ≦0.10 ≦0.30 ≦0.10 ≦0.20 ≦0.20 残部
Al Si17Cu4Mg 4.0
~5.0
16.0
~18.0
0.45
~0.65
≦1.5 ≦1.3 ≦0.50 - ≦0.3 ≦0.3 - - 残部
Al Mg9
(1)
≦0.10 ≦2.5 8.0
~10.5
≦0.25 ≦1.0 ≦0.55 - ≦0.10 ≦0.10 ≦0.10 ≦0.20 残部

注(1) その他の化学成分は、表中で"-"で示し成分値を規定していない化学成分も含み、個々の成分が0.05%以下、合計で0.15%以下とする。
(2) その他の化学成分は、表中で"-"で示し成分値を規定していない化学成分も含み、個々の成分が0.05%以下、合計で0.25%以下とする。

豆知識になりますが、日本ではアルミニウム合金鋳物(JIS H 5202)とアルミニウム合金ダイカスト(JIS H 5302)は2規格に分けて規定されています。つまりアルミニウムインゴットの使用用途を明確に区別しない国もあるということです。こうした方針は、日本の他にフランスにみられます。

出典
1) 日本産業規格 JIS H5302:2006
2) 日本鋳造工学会webサイト

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